2022年6月12日(日) 聖霊降臨説 第2主日/花の日・子どもの日合同礼拝説教要旨
 

「信じて得られる力」
マルコによる福音書 10章13〜16節
北村 智史

  今回は聖書の中からマルコによる福音書10:13〜16を取り上げさせていただきました。イエス様に触れていただいて祝福してもらおうと、人々が自分の子どもたちをイエス様のもとに連れてきた場面です。この時、イエス様のお弟子さんたちはあろうことか、「子どもなんか連れて来て、イエス様を煩わせるな」と、人々を叱りつけました。子どもたちに対してひどい扱いです。イエス様のお弟子さんたちは子どもが嫌いだったのでしょうか?
実は当時、人々は律法と言って、「こうしなさい。ああしなさい。これをしてはいけません。あれをしてはいけません」という神様から与えられた掟を全部守らなければ、自分たちは神様に救われないのだと信じていました。そのために、当時の社会では、律法のことをあまりよく知らない子どもたちは、この律法を守ることができない存在として軽んじられていたのです。今日の聖書個所で、お弟子さんたちが「子どもなんか連れて来て」と、イエス様のもとに子どもたちを連れて来た人々を叱った背後にも、こうした社会の価値観がありました。
  でも、イエス様はそんな風に子どもたちに対して冷たい態度を取るお弟子さんたちにかんかんに怒って、「子供たちをわたしのところに来させなさい。妨げてはならない」と、お弟子さんたちを戒められました。そして、子どもたちを抱き上げて、手を置いて祝福されたのです。
  当時の社会の価値観に抗って、子どもたちを御自分の下に招かれたイエス様。実に、イエス様は小さな子どもたち一人ひとりにまで目を留めて御自分のもとへと招いておられます。それは、今も変わることがありません。私たちが子どもの教会を通して子どもたちに神様の愛を伝えているのは、そのためなのです。
  大切なのは、このようにイエス様が子どもたちを御自分のもとに招かれた時、「神の国はこのような者たちのものである」、「子供のように神の国を受け入れる人でなければ、決してそこに入ることはできない」とお教えになっていることでしょう。「自分をまったく親に委ねるしかないこの子どもたちから、自分を神様に委ねる信仰を学びなさい。そうして、神の国を受け継ぐ者になりなさい」。イエス様はそう仰られたのです。
  ともすれば、私たちは上から目線で「子どもたちを教育しなければ」、そんな風に考えてはいないでしょうか?でも、実は私たちは子どもたちから学ぶことも多いのです。神様の愛のもと、子どもたちと同じ目線で共に成長していきたい、神様に育まれていきたいと願います。
  さて、最後に子どもたちへのメッセージとして、神様を信じて得られる力のお話をしたいと思います。力と言っても、それはたとえば悲しみを平然と受け止めて、辛いことがあっても神様に感謝する、何事にも動じない強さのことではありません。時々、私たちはそうしたことを信仰が強いことだと思い、そのようになれない自分を弱いとか、信仰が足りないとか考えてしまいがちですが、信仰というのはそういう強さを持っているから強い、持っていないから弱いというものでは決してないのです。
  『こころの友』という機関紙の6月号に、但馬日高伝道所と竹野伝道所牧師の山本桂子先生が「信仰者の強さというものが、あるとしたら」と題して、こんなメッセージを書いておられました。
「信仰者の強さというものがあるとしたら、悲しいことを悲しい、つらいと言えることです。信仰者は思いを訴える相手が誰かを知っているからこそ、安心して思いを注ぎ出すことができます。神様の前ではあなたの思い、弱さをさらけだしていいのです。
  福音書に描かれるイエスも、泣いて怒る人でした。恐れることもありました。十字架の死を前にしてイエスは『ひどく恐れてもだえ』ます。そして『わたしは死ぬばかりに悲しい』と言い、できるなら十字架を遠ざけてくださいと神様に祈るのです(マルコによる福音書14章33〜36節)。
  イエスがそのような姿を、神様の前にさらけだすことをいとわないのです。私たちも取りつくろう必要などありません。無理に思いを押さえ込まないでください。私たちが神さまを信じられないときでも、神さまは私たちの思いを受けとめてくださいます。」
  そして、山本先生は「弱さを抱えたままの私でいい」と書いておられました。神様を信じる者には、ありのままの自分を受けとめてくださる方がおられます。いつも弱さをさらけだし、吐き出せる方がおられます。そして、支えられる。これが神様を信じて得られる力に他なりません。
  いつも大きな支えと力を下さる神様の愛のもと、皆で神様に育まれていきましょう。そして、辛いことも起こって来る人生を力強く歩んで行きたいと願います。

 
 
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