聖霊降臨節第5主日(2016年6月12日)子どもの日・花の日礼拝説教要旨

 

「自分を愛そう!」
(マルコによる福音書書 12章28〜34節)
北村 智史

 皆さんは、何か好きな讃美歌をお持ちでしょうか。私には、実は好きな讃美歌があります。「イェスさまが教会を」という讃美歌です。そこには、こんな歌詞が記されています。「イェスさまが教会を この世から選びとり、あたらしい契約を たてられた日のように、きょうもまた主の前に、家族みなあつまって、みめぐみに結ばれた、この家をささげます。」教会というのは、神様の御恵みに結ばれた一つの家だよ、家族だよと歌われています。私は、この讃美歌がとても大好きです。そして、この歌の2番にあるように、「神様を『父』と呼び、イェスさまを『主』とあがめ、み言葉の糧をうけ、み教えの水をのみ、いつの日も愛し合い、いつの夜も助け合う」一つの家族としてこの教会を建てていきたいと願っています。毎年、子どもの日・花の日には子どもたちがたくさん礼拝に出席してくれますが、これらの子どもたちを温かく包み込んで、私たち、この府中の地で益々一つの家族になっていきたいと願います。
 さて、今日は聖書の中からマルコによる福音書12:28〜34を取り上げさせていただきました。イエス様が生きておられた当時、ユダヤの人々は律法という神様から与えられた掟を大切にしていましたが、ある時、ある人がイエス様にこんなことを尋ねたんです。「イエス様、イエス様。律法には色んな掟がありますけど、どの掟が一番大事なんですか?」これに対して、イエス様はこんな風にお答えになりました。「第一の掟は、これである。『心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くし、力を尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。』第二の掟は、これである。『隣人を自分のように愛しなさい。』この二つよりも大事な掟は他にない。」イエス様のこの答えに、質問した人を始めそこにいた人は皆、「その通りだ」と納得しました。これが、今日のお話です。
 イエス様は「神様を愛することと隣人を自分のように愛すること、この二つが最も大切な掟である」と人々にお話しになりました。そして、イエス様は、今の私たちにも、「神様を愛しなさい」、「隣人を自分のように愛しなさい」と語りかけておられます。では、私たち、普段の生活の中で神様を愛しているでしょうか。隣人を自分のように愛しているでしょうか。
実は今回、「隣人を自分のように愛しなさい」というイエス様の言葉を聖書で読んで、今の時代、これはとても難しくなっているのではないかと思わされました。「隣人を自分のように愛しなさい」というのは、「自分を愛するように隣人を愛しなさい」、「自分が自分のことを大切に思うように、隣人を愛しなさい」という意味で、自分が自分のことを愛している、大切に思っているというのを前提にした言葉なのですが、今の時代、自分が自分のことを愛している、大切に思っているというのが、決して当たり前のことではなくなってしまっているように私には思われるからです。
 このことを思うにつけ、私は今から8年程前になるでしょうか、神学生として大阪の教会で奉仕をさせていただいていた時のある経験を思い出します。子どもの教会にやんちゃな男の子がいて、遊んだ後、片付けもしない、友達をいじめるということで、なんでそんなことばかりするのか、一度膝を詰めてその男の子と真剣にお話ししたことがありました。すると、その男の子は、「どうせ俺はバカやから…」とぼそっと呟いたのです。聞けば、成績が悪い、偏差値が低いということで学校の先生から「お前はバカだ。ダメな奴だ」と言われるということ。そうした中で、自分を肯定する気持ちを持つことができなくて、何事に対しても投げやりに振る舞ってしまっているようでした。
 ここにいる子どもたちも大きくなるにつれて経験することだと思いますが、私たちの社会では、本当に残念なことに、偏差値とか成績とか、そんなものでばかり人間が測られてしまいます。そんな中で、多くの人が、他人に「お前はダメな奴だ」と言われてしまったり、自分で自分のことを「ダメな奴だ」と思い込んでしまったりして、自分のことを好きになれずに苦しんでいます。けれども、自分のことを好きになれなかったなら、自分を愛してくれる神様の愛も見えてこないし、他人を愛することもできません。人間の価値というのは、偏差値とか、成績とか、そんなものでは測れません。神様の目には皆がかけがえのない価値のある存在で、神様は皆のことを本当に愛しておられます。それは、皆のためであったなら、御自分の愛する独り子イエス・キリストを十字架につけても惜しくないと思うくらいの深い愛情です。私たちの世の中は、偏差値が低いとか、成績が悪いとか、色々な理由をつけては自分のことを嫌いになるように誘惑してくるけれど、そうした声に流されることなく、ありのままで私たちを愛してくださる神様の愛の御声にしっかりと耳を傾けましょう。そうして、神様に愛されている自分を好きになりましょう。自分を愛し、神様を愛して、自分のすぐそばにいる友達を愛していきたいと願います。

 
 
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