聖霊降臨節第4主日子どもの日 花の日礼拝(2018年6月10日)説教要旨
 
 

「心の波を静めてくださるお方」
(マルコによる福音書4章35〜41節)

北村 智史

 今日は、「子どもの日・花の日合同礼拝」ということで、子どもたちがたくさん礼拝に来てくれています。かつて、イエス様は「子供たちをわたしのところに来させなさい」と言って、子どもたちを抱き上げて祝福されました(マルコによる福音書10章13〜16節)。そして、今もイエス様は子どもたち一人ひとりを、「おいで、おいで」と言って御自分のもとに呼んでくださっていて、その温かい手で抱き締めて祝福してくださっているのだと私は信じています。このようにイエス様が招かれるこの子どもたちと一緒に礼拝を守ることができますのは、私にとって喜び以外の何物でもありません。本日は子どもたちと一緒に、私たちが一つの家族として礼拝を守ることができます幸いを神様に感謝しながら、聖書を通して聞こえてくる神様の御言葉に耳を傾けていきたいと願っています。
  さて、今日は聖書の中からマルコによる福音書4:35〜41を取り上げさせていただきました。イエス様とお弟子さんたちがガリラヤ湖を舟で渡っていた時のお話です。舟と言っても、そんな豪華な船ではありません。イエス様とお弟子さんたちが乗っていた舟は、非常に簡素な造りのものでした。また、ガリラヤ湖は、突然強風が吹き荒れて、湖が荒れるということがしばしばあったため、その航海は命懸けでした。そして、イエス様とお弟子さんたちが舟を漕ぎ出したこの時も、ガリラヤ湖が大きく荒れたのです。激しい突風が起こり、舟は波をかぶって、水浸しになるほどでした。
  「わあ、大変、大変。このままでは舟が沈んで、皆溺れ死んでしまう」。お弟子さんたちは大慌てです。けれども、そんな状況にもかかわらず、イエス様は舟の後方で枕をして眠っていました。これを見たお弟子さんたちは慌ててイエス様を起こして、「先生、わたしたちがおぼれてもかまわないのですか。何とかしてください」と言いました。すると、イエス様は起き上がって風をお叱りになり、湖に「黙れ。静まれ」と仰られました。すると、あれだけ吹き荒れていた風が止んで、波も静まり、湖が穏やかになったのです。湖をお静めになったイエス様はお弟子さんたちに言われました。「どうして怖がるんですか。私と一緒にいるなら、たとえどんなことがあっても大丈夫なんですよ。私を信じなさい」。イエス様の奇跡を目の当たりにしたお弟子さんたちはびっくりです。イエス様のことを恐れ畏んで、「いったい、この方はどなたなんだろう。風や湖さえも従うではないか」と互いに言い合いました。
  これが今日の聖書個所です。これを読むと、イエス様が神様として、偉大な力を持っておられたことが良く分かります。イエス様は風や波をも静めてくださるのです。けれども、イエス様がお静めになるのは、決して風や湖の波ばかりではない、私たちの心の波をも静めてくださるのだと私は思います。私は最近、ある出来事を通して、このことを強く思わされました。
  5月23日のことです。この日は朝から日比谷公園で行われる集まりに出席することになっていまして、これに間に合うように教会を出発しました。すると、東府中の駅まで向かう途中、オリジン弁当の前で、おばあさんが倒れていたのです。すぐに駆け寄って「大丈夫ですか」と声をかけたのですが、「大丈夫じゃない」という返事が返ってきました。他に数人の人が駆け寄って来て、救急車を呼ぶか尋ねたところ、「救急車は呼ばなくてもいい」と仰います。聞けば、オリジン弁当を買って外に出た時に躓いてこけてしまったとのこと、立ち上がれないので立たせてほしいということでした。頭を打っていないこと、骨折などの大きな怪我がないことを確認して、他の人と協力し、慎重におばあさんを立たせました。すると、おばあさんは「ありがとう」と言ってふらふらと歩きだしたのですが、やはり心配で、聞けば家は近所ということなので、家まで送って行きました。
  こういう風に言うと、私が立派に人助けをしたように聞こえるかもしれませんが、でも、実は恥ずかしい話、おばあさんを発見した時も、おばあさんを送って行く時も、私の心の中には色んな声が湧き起こって来ていたのです。「関わると面倒なことになるよ」とか、「そんなことをしていると、集まりに間に合わないよ」とか、「他の人が来てくれたから、その人に任せて退散しよう」とか。私の心の中は穏やかではなく、色んな声が聞こえて来て、波立っていました。そんな時に、心に思い浮かべたのが、今日の聖書個所に記されているイエス様の御言葉です。「黙れ。静まれ」。すると、不思議と心は落ち着いて、無事神様の御心を行うことができました。
  私たちが生きていると、神様の御心から引き離す色んな声が心の中から聞こえてきます。そうして、私たちの心は波立ちます。そんな時、私は皆さんに、「黙れ。静まれ」と仰られたイエス様の御言葉を思い出して欲しいと思います。すると、イエス様は必ず、私たちの心の波を静めてくださって、私たちに神様の御心を行わせてくださいます。どんな時にも、神様の御心に沿って歩んで行きましょう。そうして、皆で一緒に神様を喜ばせていきたいと願います。

 
 
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