2022年 6月 5日(日) 聖霊降臨節・第1主日 ペンテコステ礼拝説教
 

「言葉を放棄してはならない」
使徒言行録 2章 1〜13節  
北村 智史

  教会では、一年に3回お祭りの日があります。イースターとペンテコステ、クリスマスです。イースターというのはイエス様が復活されたことを記念するお祭りの日で、今年は4月17日に皆でこの日をお祝いしました。最近はディズニーなどでもイースターのイベントをしたりするので、そのお祝いの仕方はともかく、イースターというお祭りの日も世間で広く知られるようになってきたと思います。
  それ以上に知られているのが、クリスマスでしょう。クリスマスはイエス様のお誕生日、イエス様がこの世にお生まれになった日です。毎年12月25日が近づくと、教会だけでなく町全体がお祭りムードに包まれるので、普段教会になじみがない方でもこの日のことはよくご存じだと思います。
  では、ペンテコステというのは何を記念するお祭りの日でしょうか。実は今日がペンテコステなのですが、クリスマスやイースターに比べると、この日はあまり世間に知られていないような印象を受けてしまいます。でも、ペンテコステというのは、私たち教会にとってとても大切な日なのです。実はペンテコステというのは、教会が生まれた日、つまり教会のお誕生日です。先程司会の方が読んでくれた聖書箇所には、この日に起こった出来事が細かく描かれています。どんなことが書いてあったでしょうか。少し詳しく聖書を見てみましょう。
  ユダヤ教には五旬祭(ペンテコステ)というお祭りがあるのですが、その日にイエス様のお弟子さんたちが、今の私たちのように、神様を礼拝するために集まっていました。すると突然、激しい風が吹いてくるような音が響いてきて、炎のような舌が分かれ分かれに現れて一人ひとりの上に留まったと言います。お弟子さんたちに聖霊、すなわち神様の霊が降ってきたのです。すると、お弟子さんたちは色々な国の言葉を話し始めました。お弟子さんたちに聖霊が降って来た時の激しい物音に「なんだ、なんだ」と集まって来た人々は、お弟子さんたちがこんなふうに色々な国の言葉で話しているのを見てびっくりしました。そして、イエス様のことを宣べ伝えるペトロさんの力強い説教を聞いて、三千人もの人々がイエス様のことを信じて洗礼を受け、お弟子さんたちの仲間になりました。こうして今の教会が生まれて、聖霊に満たされたお弟子さんたちが、イエス様のことをみんなに告げ知らせるためにそれぞれ神様に遣わされていくようになったというのがペンテコステのお話です。
  聖霊を受けて様々な所から集まって来たお弟子さんたちが異なる言葉を話せるようになった。それは、これから色々な所で、色々な人々にイエス様のことを宣べ伝えていく道が拓かれたということですが、それだけではありません。それは、自分が話す言葉に閉じこもるのではなくて、多様な言葉を交わし合いながら、人と人が、民族と民族が、互いの立場や違いを越えて、また互いのコミュニケーションを阻む壁を乗り越えて受け入れ合い、理解し合える道が拓かれていったということです。実に神様は、イエス様のことを宣べ伝えていくだけでなく、言葉のコミュニケーションを通して壁を乗り越え、問題を解決し、人と人との間に平和を生み出していくために、お弟子さんたちに聖霊を与えてくださったのだと私は信じています。
  今の私たちも、色々な国の言葉は話すことはできないかもしれませんが、それでも聖霊を通して平和のために、日々話すべき言葉というものが神様から与えられているのでしょう。私たちはそれを大切にしなければなりません。
  しかし、ここで自分自身を振り返ってみて、また世界を振り返ってみて、言葉というものが大切にされているでしょうか。言葉よりも先に手が出てしまって、お友達と喧嘩したりしていないかな?あるいは感情に流されてしまって、どこかで言葉というものを放棄して、暴力に訴えてしまったりしていないかな?それは、神様の御心ではありません。でも、私たちの日々の生活だけでなく、世界を振り返ってみても、そんな行為がそこかしこに溢れています。
  人と人、民族と民族、国と国が対立する時は、それでも平和を生み出していくために最後の最後まで言葉で話し合っていかなければならないのに、それを止めて力で解決しようとする、そんな罪がこの世界には至る所で見受けられるのです。ちょうど今ロシアとウクライナが戦争をしているけれども、言葉というものを放棄して、戦争で、暴力で、自分たちに都合の良いように物事を運ぼうとする人間の罪、国家の罪がいかに悲惨な現実を生み出していくか、私たちは知らなければなりません。
  このペンテコステの日に、世界中の人々に、物事を解決するために暴力を使う罪を悔い改めるよう訴えていきたいと願います。最後の最後まで、神様が日々聖霊を通して与えてくださる言葉によって壁を乗り越え、問題を解決し、平和を生み出していきましょう。そうして、この世界を神様の愛で満たしていきたいと願います。
            祈りましょう。  ――以下、祈祷――

 
 
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