2022年 7月17日(日) 聖霊降臨節・第7主日 礼拝説教
 

「天に富を積みなさい」
  マタイによる福音書 6章 19〜21節  
北村 智史

  7月も半分が過ぎました。もう少ししたら、子どもたちは夏休みに入るのでしょう。夏休みは宿題も大変ですが、それでも色々な経験をして、思い出をたくさん作れるのが嬉しいところです。ここ数年はコロナのために、子どもたちは色々なことが制限された夏休みを過ごしてきたかもしれません。今年もまだコロナは続いていますが、そんな中でも子どもたちが健康を守られながら、たくさん思い出が作れるように神様にお祈りしています。
  さて、ここで皆さんにお聞きしたいのですが、皆さんは夏休みの思い出と言えば、どんなことを思い出すでしょうか。私はと言えば、小学校時代、お友達とプールに行ったりしたことも思い出しますが、不思議と近所の駄菓子屋さんにお小遣いの100円玉を握りしめて買い物に行ったことをよく思い出すのです。駄菓子屋さんに行くのは別に夏休みだけではなかったのですが、夏休みに朝宿題をして、そのご褒美に100円玉で買ってくるお菓子は格別で、毎日楽しみにしていたのを覚えています。「すっぱい梅にご用心」とか、「すっぱいレモンにご用心」とか言う、3つのうち1つだけものすごくすっぱいものが入っているガムが30円、それを2つ買って、10円のジュースを1つ、残りの30円は「うまい棒」というお菓子を買うという風に、毎回子どもなりに頭を使ってやりくりをしていました。今振り返ってみると、お金の大切さを教えられる経験だったように思います。
  社会人になって自分でお金を稼ぎ、やりくりをして生活をするようになると、余計にお金の大切さが胸に刻まれます。お金がなければ生活していけない。お金があれば、色々な経験をすることができる。お金って大事だな。できるだけ貯金して、お金を蓄えておこう。そう思うのです。
  けれども、今日の聖書個所でイエス様はこう言われました。「あなたがたは地上に富を積んではならない」。イエス様のこの言葉を聞くと、私たちは「あれ、じゃあ、私たちは貯金してはいけないのかな」とか、「イエス様はお金とか富を持つことそのものを否定されたのかな」とか、不安に感じてしまいます。でも、そういうことを言うことがイエス様の意図では、実はないんですね。
  先程も言いましたように、お金は大事です。私たちの教会だって、皆さんからの献金がなければ活動はできないでしょう。イエス様だって、お金の大切さは分かっていたと思います。ユダさんという人が財布を預かって、イエス様とお弟子さんたちの旅のやりくりを一生懸命していたのですが、その苦労をよく分かっておられたでしょう。でも、イエス様は同時に、お金というものが人を支配してしまう怖さというものも、十分に理解しておられました。
  「お金が欲しい」、「お金があれば贅沢できる」、そんな思いばかりで心の中をいっぱいにして、いつしかお金と権力を得ることしか考えられなくなってしまっている。それだけが人生の目的になってしまって、肝心の神様の御心を蔑ろにしてしまっている。お金にすべてを支配されて、お金の奴隷状態になって生きている。イエス様の時代も今も、そんな人が後を絶ちません。
  お金は確かに大事です。でも、それがすべてではありません。今日の聖書個所の後の場面で、イエス様はこんな言葉を語っておられます。「だれも、二人の主人に仕えることはできない。……あなたがたは、神と富とに仕えることはできない」。私たちが仕えるべきはお金ではありません。お金の奴隷状態になることが人生の目的ではないのです。私たちが仕えるべきは神様であり、追い求めるべきは神様の御心です。お金もそのために用いることができたら、どんなに素晴らしいことでしょうか。
  「あなたがたは地上に富を積んではならない」。それは、お金そのものを否定する御言葉ではなく、積み上げたお金の山のその高さを絶えず人と比べて、マウントを取り合って必死になる生き方をするなということです。「富は、天に積みなさい」。天に富を積むとは、神様のために生きるということでしょう。神様が喜んでくださることを積み重ねていく。神様が自分に与えてくださったと信じる働きを自分らしく精一杯務めていく。これこそが、私たちが追い求めるべき事柄です。
  夏休みに入ったら、子どもたちも精一杯遊び、一生懸命宿題をして勉強をするのでしょう。でも、それを将来偉い人になってお金持ちになるためだけにするのなら、虚しいことです。やがて神様が人生でこれをしなさいと役割を与えてくださる時が来ます。そこに繋がっていく大切な成長の期間として、いつも神様の御心を思い、神様の愛に育まれていきましょう。神様に仕え、天におられる神様の喜びを増し加えていく、そんな人生を皆で一緒に歩んで行きたいと願います。
          祈りましょう。  ――以下、祈祷――

 
 
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