2021年 10月 3日(日) 聖霊降臨節 第 20主日・礼拝説教
 

「教会式健康法 ―愛による活性化―」
 ヨハネの手紙一 4章 7〜12節  
北村 智史

  今日は「世界聖餐日」です。「世界聖餐日」というのは、毎年10月の最初の日曜日に守られている記念日で、この日には世界中の信徒が、「私たちは皆、イエス様を通して神様に愛されているんだよ」ということを確認しながら聖餐式という儀式に与ることになっています。聖餐式というのは、イエス様の十字架のことを思いながら皆で一緒にパンと葡萄酒に与る儀式のことです。今日は新型コロナのために、感染予防という観点からこの聖餐式は行いませんけれども、今日一日、私たちは神様の愛、イエス様の愛に結ばれて一つなのだということを確認しながら皆で一緒に過ごしていきましょう。そして、世界が平和になるように、世界中の人と心を一つにして祈りたいと存じます。
  さて、そんな今日は、聖書の中からヨハネの手紙一4:7〜12をお読みしました。このヨハネの手紙一には、神様の愛のもとで隣人同士が兄弟として、家族として互いに愛し合うことが繰り返し語られていますが、その中でも、この4:7〜12は、神様の愛と、神様のもとでの私たちの愛について最も深い言葉が述べられている部分だと私は思います。
  ここには、神様が愛であること、その神様が御自分の独り子イエス・キリストを十字架におつけになってまで、御自分の方から無条件に私たちを愛されたこと、そして、この愛に応えて私たちが互いに愛し合う中で、神様がともにいてくださり、神様の愛が私たちの中で完全なものとされるのだということが、韻を踏むような美しい文章で綴られています。特に4:12を読みますと、私たちには決して良いとは言えないこともたくさんある、また、とても恵みとは思えないこともたくさんある、そんな私たちの現実の中で、それでも私たちが互いに愛し合うことによって神様がたしかに私たちの中に共にいてくださるのだ、神様の愛が完全なものとされるのだということが良く分かるでしょう。
  私たちは愛し合うことによって、神様とその愛に触れることができる。だからこそ、私たちは互いに愛し合うのです。ここから、私たちは愛の偉大な力を窺うことができます。
  今、私は愛の偉大な力と言いましたが、2021年9月号の『こころの友』に興味深い記事が載っていました。伊丹教会牧師の春名康範先生がお書きになった、「愛は脳を活性化する」という記事です。少し長いですが、ご紹介しましょう。
 松本元というコンピューター学者が『愛は脳を活性化する』と言いました。彼は人間の脳のようなコンピューターを作ろうと動物の脳を研究して、脳は愛に反応することに気付いたそうです。『自分の存在が意義深いと感じると脳は活性化する』とも言いました。
  ある高校生が交通事故に遭い、右大脳半球の広範部に損傷を負って意識不明の重体になりました。医師から『たとえ意識が戻っても左半身が動くことは全く期待できない』と言われました。しかしご両親は諦めず、毎日ベッドの脇にいて名前を呼び、愛撫を続けました。すると1カ月後に意識が戻り、リハビリを受け、退院して登校することもできました。愛によって脳も体の細胞もみんな活性化し、元の生活に戻ることができたのです(松本元『愛は脳を活性化する』岩波書店)。現代医学の通常の治療例から見ると奇跡だそうです。
  聖書のみ言葉に『信仰と、希望と、愛、この三つは、いつまでも残る。その中で最も大いなるものは、愛である』(コリントの信徒への手紙一13章13節)、『神は愛だからです』(ヨハネの手紙一4章8節)とあります。命の創造主なる神の性質が愛だから、私たちの命も細胞も愛によって活性化するのです。
  人は自分が愛されていると感じると、生きる力が湧いてきます。人間だけでなく、動物も植物も、愛を受けると活性化します。そして愛をもって生きたい、誰かの役に立ちたいと思うと、さらに脳は活性化します。受けた愛を誰かに届けるために、勉強したり働いたりしたいですね。
  本当にその通りだと思わされる記事ですが、春名先生のこうした記事を読みながら、私はなぜ教会の高齢の方が元気なのか、納得させられる思いがしました。教会の中でいつも互いに愛し合い、脳も細胞も活性化しているからこそ、元気な人が多いのでしょう。
  今は新型コロナのために教会の交わりが制限されている中ですが、それでも互いのことを思い、祈り合い、愛し合うということを忘れずにいたいと思います。そして、新型コロナが収まったら、思い切り交わり、愛し合いましょう。神様と教会員同士の愛のもと、赤ちゃんから高齢の方まで、皆が活き活きと生きていく、生かされていく、そんな教会をこの府中の地に形作っていきたいと願います。
                祈りましょう。  ――以下、祈祷――

 
 
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